相続放棄の管理責任

相続放棄をすることで、被相続人の全ての権利や義務を承継する事ができなくなります。相続放棄をした結果、初めから相続人とはならなかったことになるからです。

そのため、被相続人の遺産は相続放棄をしていない他の相続人達が引き継いでいくことになります。たとえば、第1順位の子供達が全員相続放棄をすれば第2順位の祖父母等に権利が移り、祖父母等が全員放棄をするもしくはしでに死亡している場合、第3順位の兄弟姉妹へと相続権が移っていきます。

では、全ての相続人が相続放棄をした場合はどうなってしまうのでしょうか?全ての相続人が相続放棄をした場合は、遺された遺産はそのままの状態で放置しておけばいいのでしょうか?

実は、相続放棄をした後も、相続人には「管理責任」というものが残されています。今回は相続放棄後もなお残る管理責任のお話をしていきます。

全ての相続人が相続放棄をした場合

上記でも述べたように全ての相続人が相続放棄をした場合には、遺産をそのまま放置にしておくことはできません。相続放棄をすれば相続からは無関係となると思われている方もおられますが、実はそうではありません。

相続放棄をした後も、相続人は放棄をした遺産の管理責任という責任が残された状態になります。そのため、相続放棄後に相続人がいなくなるような場合には、相続人は相続放棄をすると共に、家庭裁判所に対して速やかに相続財産管理人の選任申立てをすることになります。

相続財産管理人とは、家庭裁判所から選ばれた相続人がいない場合に相続財産を管理する者です。

また、相続財産管理人を選任してもらうには費用が発生します。遺産の内容によっても費用は変わってきますが、特に処分に困るような不動産があるような場合には、国が代わりに引き取ることになりそれなりに費用が高くなることがあります。

相続財産管理人選任後の流れ

① 相続財産管理人が選任されたら、そのことを知らせるための公告をする必要があります。

② ①の公告後、2ヶ月の期間を経たのち、相続財産管理人は債権者や受遺者がいれば出てくるように公告をします。

③ ②の公告後、2ヶ月の期間を経たのち、家庭裁判所は、相続人を探すために、相続人の人がいたら出てきてくださいという旨の公告を6ヶ月の期間を定めて行います。この期間を経過しても相続人が出てこなければ相続人がいない事が確定します。

④ ③の公告後、特別縁故者がいる場合には、3ヶ月以内に特別縁故者に対する財産分与の申立てがされることがあります。そこで、特別縁故者に対する財産分与の申立てが認められると、相続財産管理人は特別縁故者に対し、相続財産の分与をする手続きをします。

⑤ ④までの手続きをした後も、なお相続財産が残っている、もしくは特別縁故者がいない場合には、その相続財産は国庫に帰属します。

相続放棄後の管理責任

自己の財産と同一の注意義務が課せられる

上記でも述べたように、相続放棄をしても相続財産の管理責任が残ります。

この管理責任は、自分が相続放棄をし、他の相続人が管理する事ができるような状態になるまで続きます。(民法940条1項)

相続財産の管理責任は、「自己の財産と同一の注意義務」をもって管理する必要があります。よって、他人の財産を管理するときのいわゆる「善管注意義務」に比べ、責任の程度は軽くなります。

管理において、軽い過失であれば免責されますが、重過失(必要な注意義務を著しく欠いた場合)の場合には責任を負います。

他の相続人に対する報告・引渡し義務

相続放棄をした者は。その後、他の相続人が管理を始める事ができる状態になるまでは、他の相続人に対し、事務処理の報告や、受取物の引渡し義務が生じます。

全ての相続人が相続放棄をして相続人がいなくなった場合は、相続財産管理人が選任されるまでの間は管理責任があります。

中には、相続財産管理人を選任せずに空き家などを放置してしまっているケースも見られますが、近隣などに損害が生じてしまった場合には責任を問われる可能性もあるため注意が必要です。

家庭裁判所の命令による保全処分

相続放棄後でも、相続財産の価値を維持するための保全処分が家庭裁判所から命じられる事があるため、その時はその通りに従う必要があります。

相続放棄後の管理責任はいつまで?

他の相続人が管理を開始する事ができるまで

たとえば、相続財産の中にいらない不動産があったとしても、その不動産を誰かが引受けるまでは、管理する者が必要になります。

民法では、相続放棄をした者も、その次の人が管理できる状態になるまでは、自分の財産を管理するのと同一の注意義務を持って財産を管理しなければなりません。

管理とは具体的には、税金の支払いや、建物の修繕、不法占有者の排除などがあります。

相続人が1人もいなくなる場合は相続財産管理人が管理を始めるまで

全ての相続人が相続放棄をして、その結果相続する者が1人もいなくなってしまったときは、利害関係人または検察官の請求によって家庭裁判所に対して相続財産管理人を選任を申し立てることができます。

相続放棄をした本人は、利害関係人にあたるので、相続財産管理人の選任を申し立てることができます。被相続人の債権者が利害関係人として申立てることもあります。

また、公益性のある場合などは検察官が相続財産管理人の申し立てをする場合もあります。

相続財産管理人は誰がなるの?

相続財産管理人は一般的には弁護士等の法律専門職が選任されることが多いです。

また、相続財産管理人の選任申立てには予納金を納める必要がありますが、この費用は申立人が支払います。また、年払い等ではなく、事案によって一般的に数十万〜100万円くらいの予納金を納めることになります。

この予納金の中から相続財産管理人の報酬費用にも当てられることになります。また、その後に相続財産の換価ができれば予納金は他の相続債権者よりも優先して償還を受けることができます。

まとめ

相続放棄をすることで全ての借金などの負債から解放されますが、一定の管理責任が残るということだけは忘れないようにしてください。もちろん、同順位の相続人が他にもいて、その者が相続放棄をしない場合には、その者が財産を管理することになるので問題はありません。

相続放棄をする場合は、その後の流れもしっかりと考えた上で慎重に行うことをお勧めします。

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