亡くなったお父さんが不動産を持っていた場合、相続人に名義を変更する必要があります。この手続きを「相続登記」といいます。
不動産の名義変更って大変なの? 専門家に相談したほうがいの? 専門家にお願いすると高そうだから自分でもできるの?
このような悩みをお持ちの方も少なくありません。相続登記は、一般的には司法書士に依頼することが多いです。中にはご自身で相続登記を行う人もいますが、シンプルな相続登記であれば時間と労力をかければ自分で行うことも可能です。
相続登記にかかる費用
相続登記にかかる費用は、以下のものがあります。
- 公的書類取得費用
- 送料等の雑費
- 登録免許税
- 司法書士報酬
自分で相続登記しても絶対にかかる費用
上記のうち、戸籍謄本等の公的書類取得費用や、雑費、登録免許税は自分で相続登記の手続きを行ったとしても絶対にかかる費用です。
司法書士に依頼した場合は、これらの費用も含めてまとめて司法書士へ支払うことが多いです。
司法書士報酬を安くする方法
司法書士報酬以外は、絶対にかかる費用なので安くする方法はありません。
司法書士報酬を安くする方法としては、以下の方法が考えられます。
- 自分で登記をする
- 言葉巧みに値切る
- 自分でできることは自分でする
自分で登記をする
これが最も相続登記の費用を安くすることができる方法です。司法書士報酬がゼロとなるので、必ず必要な費用以外はかかりません。
ただ、自分で相続登記をするには、平日に法務局や市役所等に何度も足を運ぶ必要があり、平日にお仕事をされている方は、なかなか難しいのも現実です。また、法務局に相談に行くところからスタートしますが、人によっては5回以上法務局に足を運ぶことにばる場合もあります。その理由は、相続登記は非常に細かい手続きであり、書類が1通でも足りなければ申請は通りませんし、1文字でも誤字があると申請が通りません。
初めて相続登記をするとなると、何度も間違えてしまうことは想定されますので、根気よく挑戦できる方であれば、自分で相続登記を完了させることも可能です。
言葉巧みに値切る
これはちょっと乱暴な表現になりますが、値切ることができれば司法書士報酬を下げることができます。ただ、この方法は、司法書士からは嫌われるのであまりお勧めはできません。
また、値切りには対応してくれない事務所の方が一般的です。知人の紹介や、もとから知り合いの場合は、報酬を安くしてくれることもあります。
自分でできることが自分でする
上記3つの中で、最も現実的な方法です。自分でできることは、戸籍謄本等の公的書類を集めたり、遺産分割協議書や相続関係説明図を作成するなどがあります。
司法書士に依頼すれば、これらの書類収集費用や、書類作成費用も発生します。これらを司法書士に頼まず、あらかじめ揃えることで司法書士の報酬を安くできることが一般的です。
ただ、司法書士報酬を安くするかどうかは、あくまでそれぞれの事務所の方針がありますので、絶対に〇〇万円安くできるというものではないことご了承ください。
相続登記の司法書士報酬相場
現在は、司法書士報酬は自由報酬ですので、法律で決められているわけではありません。そのため、それぞれの事務所によって報酬基準も異なります。
一般的には相続登記の司法書士報酬の相場は、5万円〜10万円くらいが一般的です。ただ、これはあくまでシンプルな相続登記の場合で、相続関係や書類も複雑ではないケースです。
よくホームページ等で、「相続登記〇〇万円〜」という表記を見かけますが、ここに表示されている金額はあくまで最低金額であり、この金額で自分の相続登記ができるというわけではないことが一般的です。
相続登記は、それぞれのケースにより、取得する書類の量が大幅に違ったり、相続人が大人数になる場合があるなど、蓋を開けてみないと一律に〇〇万円と言えないのが実情です。
事務所によっては、不動産価格により〇〇円加算、不動産の個数により〇〇円加算、相続関係説明図の作成により〇〇円加算など、基本報酬に加算される報酬体系をとっている場合もあります。
ただ、司法書士に依頼する場合は、おおよそいくらくらいになりそうか報酬の詳細説明を受けるようにしてください。ご自身で納得された上で依頼する方が後のトラブルも予防できます。
自分でできることとは?
戸籍の収集
相続登記に絶対に必要となるのが、戸籍謄本等の一式です。
- 被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本等(戸籍、除籍、改製原戸籍)
- 相続人の戸籍謄本
- 不動産を取得する相続人の住民票
- 固定資産課税明細書または評価証明書
上記の書類を役所を廻って集める必要があります。これらは、相続人であれば自分で集めることも可能です。特に、被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本等は、場合によってはかなりの量になることもあり、転籍を繰り返している場合には、複数箇所の役所から取得する必要があります。
これらの公的書類を自分で集めるだけでも司法書士報酬はその分安くなる可能性があります。ただ、注意点として書類は全て揃っていないと登記の申請が通りませんので過不足がないように集めるようにしてください。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書も司法書士に依頼する場合は、その分の司法書士報酬が発生することが一般的です。
特定の相続人が取得するなど、民法の法定相続分とは異なった割合で不動産を分割する場合には、遺産分割協議書を添付する必要があります。遺産分割協議書と聞くと難しく聞こえますが、目的を理解して押さえるべきポイントをしっかり押さえておけばシンプルな協議書であればそれほど難しくありません。
たとえば、父親が亡くなり、配偶者と子供1人が相続人の場合で、子供が不動産を取得する場合には、「どこの不動産を」、「誰が」「どれだけ」取得するのかを遺産分割協議の中に記載します。遺産分割協議書の、記載例なども法務省のホームページ上にありますので、そちらを参考にしてもいいですし、パソコンが家にない場合は知り合いに作成してもらっても構いません。
遺産分割協議書を作るときも、間違って二度手間にならないよう法務局の無料相談を受けながら進めていくことをお勧めします。
相続関係が複雑な場合など、自分で作成するにはハードルが高い場合には、司法書士に依頼するのがおすすめです。
相続関係説明図の作成
相続関係説明図とは、被相続人との相続関係を表したものです。司法書士事務所によっては、相続族関係説明図の作成料が別途発生する場合もあります。
しかし、この相続関係説明図は手書きでも大丈夫ですし、そもそも必須の書類ではありません。あくまで戸籍謄本等の原本を法務局から返してもらうために提出するものです。
もしも、戸籍謄本等の取得費用が全部で数千円程度で済むような枚数が少ないケースだと、戸籍謄本等を全てコピーを取って原本還付の手続きをとるか、法務局に原本を提出する方が安上がりになります。
相続関係図の記載例も法務省のホームページ上にありますので、そちらを参考にして作成することも可能です。
まとめ
令和6年4月より、相続登記の義務化がスタートします。これまでのように相続登記をしないまま何年も放置するということができなくなります。
それに伴い、過去に起きた相続の登記をしなければいけないケースも増えてきますが、「相続登記を自分でやりたい」「相続登記を安く抑えたい」という需要は多いと感じます。
最終的には、相続登記を自分で行うか、司法書士に依頼するかはご自身の判断です。今回お話ししたように、シンプルな相続登記の手続きであればご自身で行うことも可能です。
数次に相続が発生しているケースや、相続人の数が多岐にわたるようなケース、相続人の調査が必要なケースなど、相続登記の中でもかなりの時間と労力のがかかるケースもあります。そのようなケースでは、初めから司法書士に依頼することをお勧めします。
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記事監修者
ローワン綜合法務事務所の司法書士・行政書士 中瀬雄太です。
相続の豊富な経験を活かし、皆様のお悩みに寄り添います。
はじめまして、司法書士の中瀬です。
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