相続が開始した際に、相続財産の中に不動産がある場合には、相続登記をする必要があります。現状では相続登記を放置してしまっているケースもちらほら見受けられますが、相続登記を放置しておくと後に様々なデメリットが発生する可能性があります。また、近い将来、相続登記が義務化されますので相続が発生したタイミングで相続登記を行なっておくことをお勧めします。
そんな相続登記ですが、どのような費用がかかって、費用の相場はいったいどれくらいなのか気になる方も多いのではないでしょうか?こちらの記事では、相続登記にかかる費用と相場、また相続登記の種類について解説していきます。
相続登記の費用は、正直なところ一概にいくらと明確な数字が出せるわけではなく、土地や建物の価格によっても大きく変動し、手続きをご自分で行うのか、専門家に依頼するのかでも大きく異なってきますので、およその参考にご活用ください。
相続登記にかかる様々な費用の種類
相続登記といっても、その中にはいろいろな種類の費用が含まれています。また、必ず費用がかかるものと、そうでないものがありますのでそちらも解説していきます。
相続登記に必ずかかる費用とは?
相続登記には下記の費用が必ずかかります。
・登録免許税(登記の際にかかる税金)
・固定資産評価証明書の取得費用
・戸籍謄本等の取得費用
登録免許税
登記をするには、登録免許税という税金が必要です。費用は、登記する不動産の固定資産税評価額の0.4%です。
なお、固定資産税評価額を調べるには、不動産所在地の市町村役場にて固定資産評価証明書という書類を手に入れて確認します。そこにある評価額の欄に書かれている数字が固定資産税評価額になります。
不動産の評価額によっては、登録免許税だけで数十万円から数百万円にも及ぶことが少なくありません。
固定資産評価証明書
登録免許税を計算するために、固定資産評価証明書を入手します。また、登記の際の提出書類にもなります。
固定資産評価証明書は市区町村役場(東京23区の場合は都税事務所)にて発行してもらえます。取得のための手数料が市区町村によって異なりますが、おおむね300円程度です。
似たような書類に、固定資産税の課税明細書という書類があります。一部の市区町村では相続登記の際に固定資産評価証明書の代わりに課税明細書を利用できるみたいですが、気になる方は一度管轄の法務局に問い合わせてみてください。
戸籍謄本等の取得費用
相続登記をする際には、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。また、相続人全員の戸籍謄本も必要になります。なお、相続人の戸籍は出生からの戸籍までま必要ではなく、現在の戸籍だけで足ります。
なぜ、被相続人の戸籍は出生から死亡まで必要なのかというと、戸籍法の改正により度々、戸籍の様式が変化しているため、現在の戸籍だけを取得しても、相続関係を確実に把握することはできません。また、戸籍は本籍ごとに作られるので、途中で転籍していれば転籍前の市区町村でも過去の戸籍の取得が必要になります。
過去に遡ることによって確実に現在の相続人を確定させて初めて相続登記を行うことができます。
戸籍謄本の取得にも手数料がかかります。
・戸籍謄本:1通450円
・改正原戸籍謄本、除籍謄本(古い戸籍のこと):1通750円
戸籍は法改正などにより、何度も書き換えられています。そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得すると戸籍謄本の他に、改正原戸籍謄本、除籍謄本まで必要になることが多く、合計で4〜5通くらい必要になるのが一般的です。もっとも、複雑な相続関係である場合には、もっと多くの戸籍が必要になることもあります。
戸籍はその枚数に応じて手数料がかかります。また、窓口意外に郵送で取得することもできます。遠方の市区町村の戸籍謄本を取得しなければならない場合には郵送で取得するのが一般的です。
相続登記に必要に応じてかかる費用とは?
相続登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士への報酬が別途必要になります。
司法書士への報酬
相続登記を司法書士に依頼した方がいい場合は次のような場合です。
・不動産の数が多い
・忙しくて手続きの時間がとれない
・不動産の権利関係が複雑である
相続登記はご自分でもできますが、ケースによっては司法書士に依頼した方がいい場合もあります。司法書士の報酬料は10万円前後の事務所が多いです。
登記事項証明書
相続登記をする前に登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して現在の権利関係を確認します。また、登記が終わった後も確認のために登記事項証明書を取得します。登記事項証明書は誰でも取得することができ、法務局の窓口や、インターネットを使って取得することもできます。
・法務局の窓口で受け取る:600円
・インターネットで申請し郵送にて受け取る:500円
・インターネットで申請し法務局の窓口で受け取る:480円
上記以外の手数料
相続登記をするには、ケースによって次のような書類も必要になってきます。
・遺産分割協議書がある場合:相続人全員の印鑑証明書
・被相続人の最後の住所地の氏名、住所または本籍が登記記録と異なっている場合:住民票の除票または戸籍の附票の写し
・相続登記申請書に住民票コードを書かない場合:相続人全員の住民票の写し
これらの住民票の写しや、印鑑証明書は、本籍地の市区町村役場で取得でき、手数料はだいたい200円〜400です。
相続登記の司法書士報酬の相場
司法書士は事務所によって値段設定はバラバラなので、一律ではありませんが、おおむね相続登記の場合、10万円前後となることが多いです。
金額は、不動産の数や手続きの難易度によって変化します。不動産が県外に複数あったり、相続関係が複雑な案件の場合はその分、司法書士の報酬も高くなる傾向にあります。一般的には以下の場合のようなケースでは報酬が上がります。
・相続財産である不動産が複数ある
・管轄の異なる法務局への申請が複数ある
・戸籍謄本等の取得も併せて依頼する
・遺産分割協議書の作成も依頼する
また、司法書士の報酬だけではなく、遠方の場合は交通費などの費用もかかってくるので、相続登記を依頼する際には事前にある程度の見積もりを出してもらい、どんな費用がかかってくるのかを司法書士との間で確認をとるようにしましょう。
相続登記にかかる費用の計算方法
ここまでのお話で、相続登記をするには様々な費用がかかってくることはご理解いただけたかと思います。公的書類の取得など、1つ1つはたいした金額じゃなくても合計するとどのくらいになるのか一度、例を参考に計算してみます。
・相続不動産は実家の土地とその上の建物だけとする。
・固定資産評価額は合わせて4000万円。
・相続人は法定相続の子供2人。
・必要書類として、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
(戸籍謄本1通、改正原戸籍謄本2通、除籍謄本1通の合計4通)
相続人の戸籍謄本2通、固定資産評価証明書1通。
・登記する不動産を確認するために登記事項証明書2通の取得。
・登記が終了した後に取得する登記事項証明書2通の取得。
・司法書士の報酬を10万円とする。
自分自身で相続登記をした場合の費用
・登録免許税:固定資産評価額4000万円×0.4%=16万円
・戸籍謄本等の手数料:戸籍謄本450円×3通、改正原戸籍謄本750円×2通、除籍謄本750円×1通=3600円
・固定資産評価証明書:300円
・登記事項証明書:600円×4通=2400円
・合計:16万6300円
※登記前に取得した登記事項証明書をネットによる登記情報の確認だけで済ませた場合、費用が少し安くなります。
※戸籍等を郵送で請求する場合、別途郵送費用がかかります。
※登記事項証明書の取得をオンラインで行えば少し費用が安くなります。
※この他に別途、交通費などの実費もかかります。
司法書士に相続登記を依頼した場合の費用
・登録免許税:固定資産評価額4000万円×0.4%=16万円
・戸籍謄本等の手数料:戸籍謄本450円×3通、改正原戸籍謄本750円×2通、除籍謄本750円×1通=3600円
・固定資産評価証明書:300円
・登記事項証明書:480円×2通=960円
・登記情報の確認:334円×2通=668円
・司法書士の報酬:10万円
・合計:26万5528円
※司法書士事務所によっては、必要書類について実費だけでなく手数料も加算されることもよくあります。
※この他別途、司法書士の交通費などの日当や書類の郵送費用などがかかってきます。
司法書士に依頼する場合は、ご自身で法務局に支払うのではなく、司法書士に登録免許税や各種の手数料、交通費などもまとめて支払うことが一般的です。
司法書士に相続登記を依頼する場合の注意するべきポイントは、料金体系をある程度事前に示してくれる事務所を選ぶことです。後から「こんなにかかるの?」とならないように事前にある程度の金額の想定はできると安心です。
また、インターネットサイトなどに掲載されている料金表を鵜呑みにしてはいけません。あくまで最も簡単なケースでの最低料金で掲載されていることがほとんどなので、参考程度にしておきましょう。
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