離婚のときに財産分与をするけど、そのときに取得した財産には贈与税がかかるのかどうかという疑問が湧きますね。結論から申し上げますと離婚による財産分与については、別れた相手から贈与を受けたのではなく、財産分与請求権に基づいた財産の清算として取り扱われるため、もともと自分で持っている持分であるとみなされるため、贈与税は課税されません。
節税目的の財産分与には注意が必要
ただし、財産分与の割合は2分の1程度が一般的といわれており、あまりに財産分与の金額(割合)が多すぎると判断される場合には贈与税が課税される可能性があるため注意が必要になります。
とはいっても、税務上は2分の1を超える財産分与は必ず贈与税がかかるという明確な規定があるわけではなく、そもそも財産分与は夫婦間の様々な事情によって決定されるわけなので、税務上も慎重な判断が必要とされる部分でもあります。
財産分与については原則として贈与税は発生しませんが、この税務上の取り扱いをいいことに、税金逃れのための意図的な財産分与を行うことによって相続税や贈与税の課税を回避する行為が容易に想定されるため、税金回避が目的と認められる離婚が行われた場合は贈与税が課税される可能性があります。
しかし、税務署が税金回避の目的で離婚したのかどうかを見抜き、それを立証することは通常は困難であると思われます。そのため、よほどのことがない限り、実務上は贈与税が課税される可能性は限定的と言えます。
財産分与と譲渡所得税
一方で財産分与における財産をあげる側については譲渡所得税が発生する場合があります。財産分与として現金を与える場合には、現金の譲渡という概念はないため譲渡所得税はかかりませんが、土地や建物などの不動産や、株式、貴金属などの財産を与える場合で財産分与のときの時価が取得価格よりも上がっているような場合には譲渡所得税が発生します。
譲渡所得税は、土地の場合で言えば土地売却時の収入から土地購入にかかった金額と譲渡にかかった費用を差し引いた利益相当額が譲渡所得として課税されますので、財産分与として不動産を与えたとしても入ってくる収入があるわけではないので、一見すると譲渡所得税が発生しないようにも見えると思います。
つまりこれは、本来お金をもらって売買した場合には譲渡所得税が発生するはずなのに、無料で譲渡することによって、本来であれば納税すべきはずの税金がゼロとなってしまうことを防ぐために、実際には収入がないにもかかわらず、あたかもお金をもらって不動産を売却したものとみなして、譲渡所得税が発生し納税させるという税務上のルールによるものです。
まとめ
離婚による財産分与というのは夫婦が共同生活をしていく中で作られた財産を”清算する”ということであって、贈与のように新たに財産を取得するわけではないため、原則的には贈与税は発生しません。
ただ、財産分与で得た財産が常識の範囲を明らかに超えるような多額である場合や、明らかに贈与税や相続税を逃れるための節税目的の不正な離婚だと認められるような場合には、贈与税が発生する可能性があります。
また、財産を取得する側には基本的に贈与税は発生しませんが、財産を渡した側には譲渡所得税が発生する場合があるので注意が必要となります。
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記事監修者
ローワン綜合法務事務所の司法書士・行政書士 中瀬雄太です。
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