日本における相続権について
相続を受けることができる権利(相続権)は、民法で定められており、相続権を持っている人を相続人といい、被相続人の配偶者は常に相続権を持ち相続人として遺産を取得することができます。
配偶者としての地位を主張するには、法律婚(民法上の婚姻)をしている必要がありますが、日本では婚姻は男女でなければならない、夫婦同姓にしなければならないなどといった色々な制約からあえて法律婚を選択しない人もいます。しかし、残念ながら現時点の日本では法律上の婚姻関係にない内縁の配偶者や同性のパートナーには相続権はありません。
別居中の妻の相続権
その一方で、別居中の妻などは、事実上離婚しているような状態であっても戸籍上、婚姻関係にあれば相続権があるので相続人として亡くなった方の遺産を相続することができます。
つまり、被相続人と同居している内縁の妻であっても、その被相続人に別居中の妻がいる場合は、相続権は別居中の妻にあるので、もし相続が発生した場合には同居している内縁の妻は住んでいる家を失うことになる可能性もあるということです。
相続人以外の人が財産を取得する方法
内縁の妻や同性パートナーが、被相続人と一緒に住んでいた家や一緒に築き上げてきた財産を承継するためには、遺言や、養子縁組という方法を選択することが考えられます。これらの方法を利用することにより、相続権を得たのと同じような法律効果が得られるのです。
遺言を利用する場合
被相続人の生前に内縁の妻や同性パートナーにも財産が取得できるように遺言書を書いておく方法です。ただし、一定の範囲の相続人には”遺留分”という法律で決められた最低限の遺産の取り分がありますので、遺言を書く場合はこの点に気を付ける必要があります。たとえば例を挙げると、なんでもかんでも「全ての財産を内縁の妻に相続させる」という内容の遺言を書いてしまうと、相続人たちの遺留分を侵害していることになります。
また、遺言を使うことによって財産を取得することができたとしても。あくまで相続人にはなれないので、相続税を計算する際の基礎控除額の計算にはこれらの人の分は含まれません。さらに相続税の負担を大きく減らすことができる相続税の配偶者控除や小規模宅地の特例なども適用できません。そのうえさらに相続税は2割加算されてしまいます
※相続税の2割加算とは、被相続人の配偶者、子、父母以外の人が、相続財産を取得した場合には、各人ごとに算出された相続税に2割上乗せする制度です。兄弟姉妹などがよくある例です。
養子縁組を利用する場合
こちらはどちらかというと内縁の妻というより、同性パートナーに財産を残す対策として考えられる方法です。養子縁組というのは自分の子として迎え入れるという制度ですので、被相続人と同性パートナーとの間で親子関係を作ってしまうという方法になります。養子になることで自分の子として相続人の1人として数えられるため、被相続人の養子になった同性パートナーは、民法上の相続人として被相続人の財産を取得することができるようになります。
さらには、養子縁組により親子関係になることで、姓も同じくすることができるため、同性同士であっても婚姻関係に近い関係を作り出すことができるのです。
また、この場合には相続税の計算においても小規模宅地の特例を利用できる可能性もあります。さらに2割加算の適用はありません。
これらの方法以外にも、たとえば生命保険などを利用することで財産を残していく方法もあります。このように、法律上は相続権がない内縁の妻や同性パートナーに財産を残す場合は、被相続人の生前にきちんと対策を講じておくことが必要不可欠です。
まとめ
今現在の日本の法律においては、内縁の妻や同性パートナーには相続権が認められません。しかし、上記にも挙げたように「遺言」や「養子縁組」を利用することによって相続権が発生したのと同じような法的効果を生み出すことは可能です。また、今後の社会情勢により日本の相続権についても今後法律が改正されていく可能性は十分にあります。
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記事監修者
ローワン綜合法務事務所の司法書士・行政書士 中瀬雄太です。
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