預金残高を調べる方法

亡くなった人(被相続人)の財産を相続人達で引き継ぐにはまず最初に、被相続人の財産を調査して把握する必要があります。全体の財産が分からないことには、相続人達で遺産分割協議をして財産を分け合うことができません。

被相続人の遺産の中でも最も多くの家庭に当てはまるのが「預貯金」ではないでしょうか。「相続の手続きを進めるためには、被相続人の預金通帳があるけどそれだけじゃダメなの?残高証明書があったほうがいいって聞いたけどどうやって取るの?」このような疑問にお答えします。

基本的には、通帳があればある程度預金の金額は把握できるので、相続手続きを進めるにあたり残高証明書を取得するのは必須条件ではありません。おそらく多くの場合、残高証明書が必要となるのは相続税の申告が必要なときが多いかと思います。

遺産の総額が相続税の非課税枠を超えてくるようば場合には相続税の申告が必要になりますので、全ての遺産の評価をしなくてはいけません。預金がいくらあるのかを証明してもらうために必要なのが残高証明書です。亡くなった日の預金残高を証明する必要があります。相続税申告の際に税理士に残高証明書の取得をお願いされるケースもあります。

最近では、ネット銀行の利用者も多く、ネット銀行では通帳が発行されないため残高証明書の必要性は高くなってきています。残高証明書が必要になる場面は主に「遺産分割協議」「相続税の申告」の場面です。

残高証明書の取得方法

各金融機関に発行の請求をする

残高証明書を取得するには銀行などの各金融機関の窓口に出向いて発行を請求する必要があります。遠方の場合は、郵送でのやりとりにもお応じてくれます。まずは、利用している全ての金融機関を把握します。そして、残高証明書を発行する金融機関に一度連絡を入れておくと必要書類なども教えてもらえます。金融機関によって若干手続きに必要な書類や方法が違うこともあるので注意が必要です。

複数の支店に口座を持っている場合でも1つの窓口で手続きを進めることができます。また通帳を発行した支店以外の支店でも手続きは可能です。1つの支店に、普通預金と定期預金を持っている場合には、残高証明書にはその両方が記載されます。

請求できる人は誰か?

残高証明書の請求は相続人が行います。全員で行う必要はなく、相続人の代表者の1人が行うことも可能です。他の相続人からの委任状などはいりません。また、遺言執行者や相続財産管理人(相続人がいない場合に家庭裁判所が選任する人)も残高証明書の発行請求が可能です。

また、相続人の方の依頼であれば代理人が行うことも可能です。ただし、金融機関によっては、代理人になれる人を親戚の範囲や士業に限定していることもあるので注意してください。もし代理人に依頼する場合は、相続人の代表者の実印が押してある委任状が必要です。

残高証明書の請求に必要な書類

  • 被相続人の死亡の事実が分かる戸籍謄本等
  • 相続人であることが分かる相続人の戸籍謄本等
  • 窓口に行く相続人全員の本人確認書類(運転免許証等)
  • 窓口に行く相続人全員の印鑑証明書(発行後6ヶ月以内のもの)と実印
  • 残高証明書発行依頼書(窓口でもらえます)

※多くの金融機関では、被相続人と相続人の戸籍の代わりに、「法定相続情報一覧図の写し」でも手続きが可能です。法定相続情報一覧図の写しは法務局で入手できます。

代理人が請求する場合には、本人からの委任状と、代理人の本人確認書類が別途必要になります。

手数料を支払う

残高証明書は手数料がかかります。1通約500〜1,000円くらいで金融機関によって金額が異なります。手数料は、支店1つごとにかかりますので口座を複数持っている場合には、それだけの手数料が必要になります。

残高証明書の受け取り

窓口で残高証明書の請求をしてから、約1〜2週間くらいすると郵送で自宅に残高証明書が送られてきます。金融機関によっては、窓口で当日に発行してくれるところもあります。

残高証明書の注意点

銀行に連絡すると口座が凍結される

まずは、被相続人が亡くなったことを金融機関に知らせることになりますが、金融機関は被相続人が亡くなった事実を知るとその口座を凍結します。口座が凍結されると、以後その口座から預金を引き出すことはできなくなります。

誰からの引き出すことはできなくなるので、不正出金などの心配もなくなり安心ではありますが、公共料金の自動引き落としなどをその口座で行っていた場合には、口座が凍結すると困ってしまうので事前に引き落とし口座の変更を行っておく必要があります。

残高証明の基準日は亡くなった日

残高証明の発行の際に金融機関から「基準日はいつですか?」と聞かれることがあるので、基準日は「被相続人がお亡くなりになった日」を指定してください。基準日の指定を間違えてしまうと、相続税の申告などで使うことができませんので十分ご注意ください。

定期預金がある場合には利息分の計算も必要

預金の中に定期預金がある場合には、元本だけではなく利息の計算も必要です。残高証明書には元本しか記載されませんので、定期預金の場合には、別途「既経過利息」の計算も依頼してください。亡くなられる日までの利息がつきますので、その分を計算してもらう必要があるのです。低金利の現代でも、元本が大きければそれなりの利息額になります。残高証明書と同時に経過利息計算書の発行も依頼しましょう。

まとめ

残高証明書を発行してもらうには、相続人達がどこの金融機関に口座を持っているのか把握していなければいけません。そのため、生前からどの金融機関に口座があるという情報を家族の方に伝えておくことが大切です。もし、口座が分からない場合には、まずは通帳やキャッシュカードを探しましょう。通帳などが見つからず、思い当たる節があれば、金融機関に確認してみましょう。

また、ネット銀行などは通帳もないので、スマートフォンのアプリやメール履歴、ブックマーク、お気に入りなどを調べてみましょう。ネット銀行はそれぞれのアプリの中で利用明細の確認や振込み操作ができるので、スマートフォンの場合はアプリが入っている可能性は高いです。ネット銀行は窓口がないので、電話と郵送でのやりとりになりますが、基本的には手続き方法は通常の金融機関と同じです。

記事監修者

ローワン綜合法務事務所の司法書士・行政書士 中瀬雄太です。
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はじめまして、司法書士の中瀬です。
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