生前に大切な財産を誰かにあげるための手段として「生前贈与」があります。遺言書との大きな違いは、亡くなってからではなく、生前のうちに誰かに財産を無償で渡すことができるところです。
相続税の節税対策をする方法の中で特に取り組みやすいのは「生前贈与」です。亡くなる前に財産を渡しておくことで、相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。
贈与とは「財産を他人に無償で与えること」ですが、税務上贈与が成立するためには一定の要件が必要になります。
贈与と認められないと本人は生前贈与をしているつもりでも、相続財産として相続税が課税されることがあるので注意が必要です。
また、将来の遺産分割対策にも利用できるので実際に多くの方から相続対策の1つとして利用されています。
生前贈与とは
生前贈与とは、財産を渡す側と、もらう側の、お互いの合意があってはじめて成立する制度です。生前贈与をするだけであれば、個人間であげます、もらいます、の意思表示だけで済みますので専門家は必要ありません。
生前贈与というのは、なにか「贈与契約書」を作らなければいけないというルールはありません。口約束だけでも贈与が成立します。
⑴ 双方の合意
贈与は契約の一種なので、一方的な行為ではなく、お互いに合意のもとで行う必要があります。つまり、受取った側が認識をしている必要があります。
⑵ 贈与契約書の作成
贈与契約書は、贈与税の基礎控除等を適用する際に大切です。また、贈与契約書に記載するべき5つの要素を明確にしておきます。
- だれが(贈与者)
- だれに(受贈者)
- いつ(贈与時期)
- 何を(贈与財産の内容 )
- どのように(贈与の方法)
上記5つの要素は必ず入れるようにしましょう。
生前贈与は相続対策のために行われることが一般的なので、不動産などの金額の大きい財産が動くことも多く、後で「言った言わない問題」などのトラブルを避けるために、専門家も交えて最低限の対策はしておくことをお勧めします。
贈与契約書を作成することで、後のトラブル防止にもつながりますし、仮に裁判沙汰になった場合には大きな証拠になります。贈与契約書は自分たちだけでももちろん作ることは可能ですが、色々なトラブルを目の前にしてきた専門家の目線からできるアドバイスもあります。
また、生前贈与では、不動産を贈与する場合には所有権の移転登記も必要になります。当事務所では、生前贈与のご相談から名義変更、契約書のチェックまで細かく対応しておりますのでお気軽にご相談ください。
名義預金には十分注意する
被相続人が自己の資産で相続人名義の預金を作ると「名義預金」として相続税の課税対象になります。名義預金の存在は税務署が相続税の申告における調査で最もよくみられる事例と言われています。たとえば父親が子どもに財産を遺してやろうと子どもの銀行口座にお金を預けていても、子どもがそれを知らない場合、贈与とは認められず相続税が課税されることがありますので注意が必要です。
生前贈与のメリット
相続税対策にもなります
ご存知の方も多いと思いますが、生前贈与は相続税対策の1つとしても多く利用されます。数年前まで相続税の基礎控除額は、「5000万円+1000万円×法定相続人の数」とされていましたが、平成27年より、基礎控除額が見直され、「3000万円+600万円×法定相続人の数」となり、相続税の対象となる方がかなり増えました。
相続税がかからないようにするには、財産の額を減らすのが手っ取り早いですが、だからといって一気に財産を減らそうとすれば、贈与税の負担もかなり大きいので、相続税対策としてお勧めできるのが毎年少額ずつの贈与です。
贈与税は、毎年110万までは非課税とされていますので、それをうまく利用するば、1000万円ある財産を徐々に無税で減らしていくことができます。ただ、この贈与税の非課税枠の規定は近年見直しが検討されているので、あと何年利用できるかは今後の政府の動き次第です。できるだけ早いうちの対策がお勧めである事は間違いありません。
遺産分割のトラブル防止になる
生前贈与をうまく利用する事で、相続人が遺産分割をする際の紛争を防止する効果も期待できます。今まで仲が良かった兄弟が遺産の分割になるとそれを機に一気に絶縁状態になってしまうことも実際にはあります。
たとえば生前に財産を相続人に平等に分けて贈与しておけば、後のトラブルを未然に防ぐことができるかもしれません。家は財産が揉めるほどないから大丈夫という家庭ほど、意外と相続争いに発展するケースも多いです。無用なトラブルを防止して円満相続を実現するために生前贈与を上手に利用してみてください。
生前贈与で注意すべきこと
●生前贈与は、相続税よりも高い税率
生前贈与をした時にかかる贈与税は、万が一の自体が起きた後で財産を承継した時にかかる相続税よりもずっと税率が高い点は注意が必要です。
贈与税には一般税率と特例税率の2種類があります。
安易に高額な財産を贈与するとかえって多くの税金を払うことになりかねませんが、国の政策として平成27年1月より、高齢世代から孫の世代に贈与を促す方向に制度が変わってきています。
こちらの制度を上手に利用することで、例えば親や祖父母の方から、お子様やお孫様に住宅や子育て等の資金を援助するような場合は優遇措置により贈与税がかからずに贈与が出来る制度等が用意されています。
生前贈与には色々な知識が必要
生前贈与といっても、相続税対策として行う場合には様々な法律や税務の知識が必要になってきます。当事務所では、法律面で徹底的にサポートさせていただく事はもちろんのこと、税務面でのより細かいご相談には提携している相続税に強い税理士と一緒に対応させていただくこともできます。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
生前贈与サービスの料金
不動産の生前贈与には、登録免許税等の実費と司法書士の報酬が必要です。
項目 | 登録免許税 | 司法書士報酬 |
---|---|---|
贈与による所有権移転登記(贈与契約書の作成も含む) | 評価額×2% | 45,000円〜 |
【必要書類】
・固定資産評価証明書
・受贈者の住民票の写し 300円程度
・贈与者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)200〜300円程度
・贈与者の実印
・贈与者の登記済証または登記識別情報
まとめ
贈与というと、なんとなく親族間で口約束のイメージがあると思いますが、後の遺産分割や相続税対策のことを考えるなら、できる限り証拠を書面により残しておくことを強くお勧めします。
なるべく、実印で直筆の署名により作成しておくとより安心です。
生前贈与のことでお悩み方はお気軽に当事務所までご相談ください。
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記事監修者
ローワン綜合法務事務所の司法書士・行政書士 中瀬雄太です。
相続の豊富な経験を活かし、皆様のお悩みに寄り添います。
はじめまして、司法書士の中瀬です。
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